X線照射をうけたハツカネズミ妊娠母体に現われた異常胎児 (予報)
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概要
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X線の畸型形成効果を利用し, ハツカネズミ胚の発育過程におけるX線の影響とくに受精後の照射時期による異常形質の出現について観察し, さらに平均胎児数, 性比, 体重および体長と尾長の比について調査した。ハツカネズミ (Mus musculus) はB72 の雌および Swiss albino の雄を使用し, 受精後0.5日目から15.5日目までの間にそれぞれ1回, 妊娠母体に 200r のX線を全身照射した。異常形質の出現頻度: 受精後種々の時期に照射されて得られた 166 個体の胎児の中, 46 個体(27.7%)の異常胎児が発見された。異常胎児のすべては受精後8.5日目より 12.5 日目までの間に照射されたものである。得られた異常形質は無眼症, 脱脳症, 鼻部の異常, 過剰指, 欠除指, 癒合指, 短尾, 変形した尾, 肛門の異常であった。これら各種の異常形質は, それぞれ受精後, 特定の時期に照射をうけたものにみられた。1腹あたり平均胎児数: 対照区における胎児数と照射区における出産直前の1腹の平均胎児数は前者6.0に対し後者5.1で, 両者の間に大きな差はみられなかった。性比: 対照区より得られた雄の比率は 56.7%, 照射区におけるそれは 54.8%で, 両者の間に明らかな差はみられなかった。体重: 受精後8.5日目より 12.5 日目までに照射をうけた胎児は対照区の体重より顕著な減少を示しており, その後に照射したものは次第に体重を増加し対照区に近づいている。体長と尾長の比: 対照区では 2.1〜2.5 を示したが, 受精後 8.5 日目より 12.5 日目までの照射区では2.6以上の比を示す短尾が多く現われた。
- 日本遺伝学会の論文