トマトの自然交配
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概要
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トマトに於ける自然交配の程度を確める爲めに、材料として二品種を選んだ。一は一般のトマト品種に見る如き多缺刻葉を有するポンデローザ種、他は恰も馬鈴薯の葉の如き少缺刻葉を有するミカド種で、この葉形の差異は苗の時代でも容易に區別が出來る。先づ兩者間の人爲交配を行つた結果は、F1は多缺刻葉を有し、F2に於ては多缺刻葉のもの212株、少缺刻葉のもの79株、即ち略ぼ3:1の比に分離した。故に、この形質は一對のゲンに依つて現され、多缺刻が少缺刻に對して優性である。1925年、兩品重を畦幅八十糎、株間四十糎の交互畦に植ゑ、一本仕立式に整枝した。而して、ポンデローザの開花前に開花したミカドの花序は切除し、ポンデローザと同時開花をしたミカドの花から出來た果實合計119果を採收し、之から得た種子を翌春苗床に播種して苗の調査を行つた。その結果、119果中多少でも多缺刻葉の苗即ち雜種苗を生じたものが38果で、之は總果數の31.9%に當る。之を果別に見る時は、雜種數が大部分20%以下であるが、一果は46.7%といふ多數の雜種を生じた。而して、總計苗數に於ては13,244本中雜種294本で、即ち2.22%の自然交配率である。ジヨーンス氏が調査したトマトの自然交配率は1.98%で、上記の成績と近似してゐる。また、本著者が曩に報じた如く、同科なる茄子の交互畦に於ける自然交配率は2.96%であつたが、之から觀ると、茄子とトマトとの各自然交配の程度は稍似たものと去ひ得る。以上の結果から次の結論に達する。即ちトマトは、遺傳研究用の場合は勿論のこと、他品種と隣接して栽培されてゐる場合は、その採種に當つて人爲的授粉管理を行ふことが必要である。
著者
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