羊齒植物の細胞學的研究 : XXIX. さらに緑ラセンについて
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概要
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1. タチクラマゴケにもコンテリクラマゴケと同樣な葉緑体づくりがみえ, 三つの分裂型, 即ち普通型, 縦割型, 二割型がみられ, この他にアミーバ型がみられる。タチクラマゴケの分裂組織ではつねに1葉緑体細胞の状態で細胞分裂し, 一つずつ葉緑体をふくんで, 1葉緑体細胞となり, この細胞の数が増して, あるものはそのままの状態をつづげて, 分裂組織としてのこり, あるものは, 細胞中で葉緑体分裂を行つて, 多葉緑体細胞となる。2. 日かげまたは暗所におくと, 一樣構造に見えた葉緑体にも緑ラセンが明かとなる。2/5M NH4Cl 溶液によつてコンテリクラマゴケの葉緑体などは, 緑ラセンがふくらんで, ラセンづくりが不明瞭となる。ある植物では一樣に見える葉緑体も, 酸, アルカリ, 固定液などによつて緑ラセンを示す。緑ラセンを示す葉緑体はひかげまたは暗所に12時間くらいおくと, 緑ラセンはさらに明かになる。3. 盛に原形質流動している生きている細胞中で, 葉緑体は緑ラセンの明瞭な状態と不明瞭な状態との間にうつり変わりがある。4. 葉緑体中には元來, 緑ラセンがあり, これがつねに明かに見えるものもあるし, ときに一樣になるものもある。一樣に見えるのは, 緑ラセンがふくらんだからであり, 緑ラセンのちぢむようにはたらく試薬を與えると明かに見えるようになる。即ち, 緑ラセンが見えるのがふつうで, ちぢみとふくらみとによつて明瞭あるいは不明瞭となる。5. 羊歯植物および, それ以下あるいは以上の多くの植物の葉緑体に緑ラセンが見え, 従來Grana と考えられているものは, 緑ラセンの光学的断面か, 緑ラセン自身のふくらみか, ちみつに卷いた部分か, あるいは同化産物かである場合がある。また, 実際 Grana があつて, 一樣構造との間に緑ラセン状をへて, 天然に可逆的轉換をすることがある。従來, あみ状, せんい状, 一樣, 粒状などと考えられる場合も, すべて, この緑ラセンで説明できる。電子顕微鏡による膜状構造は, 緑ラセンがさらに細くわれて polytene の状態になつたものであろう。また, 粒状構造は, 緑ラセンの部分的肥厚ではないであろうか。