豚凍結精液の実用化に関する研究
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概要
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本研究では、現場で実用可能な豚凍結精液による人工授精法を開発することを目的とした。本技術を普及させるためには雄豚個体間の耐凍能の差異を最小限にする必要がある。実験1では、耐凍能を左右する因子が精漿中の細菌であること、細菌の膜構成成分であり,病原性を示すLPS(lipopolysaccharide)が精子の先体部および尾部に発現・局在するToll-like receptor4(TLR4)により認識され、精子はアポトーシスにより死滅することを明らかとした。このLPS-TLR4系はLPS不活化剤Polymyxin B(PMB)の添加により抑制可能で、それを用いた精液処理法を考案した。精漿中にはグラム陽性菌も検出されるため、LPS以外にも耐凍能を左右する因子が存在すると考えられる。そこで、実験2では、より安全に精子を凍結するため、精漿を採精後直ちに除去する手法を開発し、これにより耐凍能の低い個体の融解後精子運動性は改善され、耐凍能の課題を解決した。しかし、この手法により作出した融解精子は自発的な受精能獲得や先体反応を誘起しており、人工授精による受胎率は著しく低かった。融解液への精漿添加はこれら精子活性化を効果的に抑制した。以上の結果から、①採精後直ちに精漿を除去し、Penicillin G+PMB処理した前処理液で置換して凍結する②融解時に精漿含有融解液にて精子を溶かし、人工授精を実施する、という新しい豚凍結精液による人工授精法を開発し、受胎率80%以上、一腹産子数10頭以上という繁殖成績を可能とした。
- 大分県農林水産研究指導センターの論文
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