蒋介石の人格形成と日本
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
蒋介石は生涯にわたって、自分の成長経験を取り上げ、国民を激励する講演あるいは訓示を行っていた。そこでよく取り上げられたのは、母の教訓と新潟県高田連隊での軍人生活であった。八歳の時に父を失った蒋介石には、いわゆる家庭教育が当然母の教訓しかなかった。高田連隊の軍人生活が母の教訓と肩を並べて論じられたことは、彼の生涯に日本での留学経験がいかなるウエートを占めていたのかを窺わせよう。 こうした認識に鑑みて、蒋介石の日本留学経験、さらにその後の五回の来日経験を合わせて考察することにより、青年期から壮年期に至るまでの彼の人格形成における日本の位置づけを次のように明らかにした。すなわち、日本は青春期の彼を啓発した場所であり、また、壮年期の彼に勇気を与え、革命再起の活力を齎した場所である。こうした個人の経験から、彼は中国が日本の近代化経験を手本として学ぶべきであると考えたのであった。これは同時に、彼が同胞に対して、日本に学ぶようにと呼びかける動機ともなった。
- 国際日本文化研究センターの論文
国際日本文化研究センター | 論文
- 興行としての宣教--G・オルチンによる幻燈伝道をめぐって (特集 近代東アジア文化とプロテスタント宣教師--その研究と展望)
- 「未亡人」の家--日本語文学と漱石の『こころ』
- 日清・日露両戦役間の日本におけるドイツ思想・文化受容の一面--総合雑誌「太陽」掲載の樗牛・嘲風・鴎外の言説を中心に (共同研究報告 「総合雑誌『太陽』の総合的研究」中間報告-その2-)
- 「満州」幻想の成立過程--いわゆる「特殊感情」について
- 《三条本洛中洛外図》の人脈について