十九世紀中葉日本における海洋帝国構想の諸類型 : 創刊期『太陽』に関連して
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概要
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近代日本の国家形成および経済構造の問題を考えようとするものにとって、日清戦争を契機とする海洋帝国構想の解明がいかに重要であるかは言うまでもないだろう。十九世紀中葉における環太平洋経済圏においては、アメリカ、イギリス、ロシア、ドイツ、日本等が同地域の覇権をめぐって、それぞれ帝国間の争いを展開していた。確かに日清戦争の勝利は日本帝国の環太平洋経済圏における地位と役割を増大させた。そしてこのことは本論文で触れようとする海洋帝国構想の多様な展開を飛躍的におし進めていった。一八九五年に創刊された日本の代表的総合雑誌『太陽』に現れた海洋国家論、南進論、植民論、そして経済改革と結びついた貿易立国論等を分析するならば、海洋帝国に関する多様な構想がそのまま日本帝国の環太平洋経済圏における政治、経済、軍事戦略の方向の決定に連なるという重大な事実が浮かび上がってくるのである。 従来の通説は日本と朝鮮半島および中国に対する関係を基本とみて、こうした諸問題にあまり注意を払ってこなかった。しかし再びくり返すと、近代日本の重大な転換期であった日清戦争後における帝国形成および経済構造の十分な解明は、環太平洋経済圏に対する日本帝国のレスポンスを十分に考慮することなしには発展しないのである。
- 国際日本文化研究センターの論文
- 1999-06-30
国際日本文化研究センター | 論文
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