<茅>について : その呪術的効用をめぐって
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
「茅」という漢字は「ちがや・かや」と訓まれる。植物学の分類によれば、カヤ(=ススキ、Micanthus siensis Anderss)とチガヤ(Imperata cylindrical (L.) Beanv)は異なる植物である。しかし古代の日本や中国では、しばしば混同されている。 茅(チガヤ)は典型的な魔除けの植物である。「茅は霊草をいう(『漢書』郊祀志上、顔師古注所引張晏)」と、茅には不思議な力が認められていた。日本では、端午の節句の時期にシメナワに茅と艾(ヨモギ)を結わえ、屋根に飾る風習がある。これは家屋に侵入しようとする悪鬼をしばりあげるためのものであろう。茅(チガヤ)は葉が矛の形に似る。また茅の葉は刃物の様によく切れる。「茅(ち)の輪くぐり」は輪をくぐることによって身についた悪鬼をそぎおとし、「茅(かや)葺き(カヤ=ススキ)」は屋根から侵入しようとする悪鬼をふせぐのだろう。また端午や夏至に食べる粽(チマキ=茅巻)は、茅(チ=チガヤ)で巻いたから、この名があるとされている。祇園祭のかざりチマキは門口にぶら下げられる。本来、正月のシメナワと同様の悪霊除けであったように思われる。
- 国際日本文化研究センターの論文
- 1998-09-30
国際日本文化研究センター | 論文
- 興行としての宣教--G・オルチンによる幻燈伝道をめぐって (特集 近代東アジア文化とプロテスタント宣教師--その研究と展望)
- 「未亡人」の家--日本語文学と漱石の『こころ』
- 日清・日露両戦役間の日本におけるドイツ思想・文化受容の一面--総合雑誌「太陽」掲載の樗牛・嘲風・鴎外の言説を中心に (共同研究報告 「総合雑誌『太陽』の総合的研究」中間報告-その2-)
- 「満州」幻想の成立過程--いわゆる「特殊感情」について
- 《三条本洛中洛外図》の人脈について