ツルのコクシジウム症
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概要
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日本では,北海道東部に生息するタンチョウ(Grus japonensis)と,越冬のために鹿児島県出水地方に飛来するナベヅル(G。monacha),マナヅル(G。vipio)の3種のツルが主に見られる。3種のツルはいずれも環境省レッドリストで絶滅危惧II類に分類される。コクシジウム原虫Eimeria gruisとE。reichenowiはツルの主要な寄生虫感染症であるツルコクシジウム症を引き起こす。既報の研究はツルコクシジウム症が日本の3種のツルにも存在することを報告している。感染率と遺伝的多様性の理解は寄生体コントロールの上で重要となるが,3種のツルにおける詳細な疫学調査はこれまで行われていない。それぞれの越冬地において非侵襲的に採集された糞便サンプルについて,まず宿主のゲノムDNAを標的としたシーケンシング解析を行うことでサンプルがいずれのツル種に由来するかを同定し,さらに個体識別のためのマイクロサテライト解析により解析サンプルの重複を回避した。470個のサンプルについて検鏡とITS2配列を遺伝マーカーに用いたPCR-based capillary electrophoresis(PCR-CE)により調査したところ,コクシジウム感染率は北海道のツル集団で18-30%であるのに対して出水のツル集団では>90%であり大きな違いが観察された。さらに,PCR-CEデータについて対応分析を行った結果,ナベヅルとマナヅルの間にはコクシジウムの群集組成に違いがあることが明らかとなった。次に,系統解析を行うため,タンチョウとナベヅルから排出された単一オーシストから18S rRNA遺伝子配列とITS2配列を決定した。18S rRNA遺伝子配列の系統解析の結果,E。gruisは単系統であるのに対してE。reichenowiは多系統であった。PCR-CEデータとともに考えると,この結果は,E。reichenowiには複数の遺伝子型が存在し,その遺伝子型によって宿主特異性が異なることを示している。我々のデータは現在E。reichenowiと分類されるグループは複数種から構成されることを示唆し,再分類の必要性があることを強調する。
- 動物の原虫病研究会の論文
- 2011-12-00