広葉樹のエゾシカ食害に対する忌避剤の効果的な適用時期
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概要
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広葉樹にエゾシカ忌避剤を効果的に適用するには,樹種ごとの枝の伸長フェノロジーと食害の発生時期に合わせた散布適期を明らかにする必要がある。そこで,北海道標津町のミズナラ,ヤチダモ,カツラ,ハルニレ植栽地において,忌避剤を異なる時期に適用する試験地を設定し,適切な適用時期について検討した。カツラの食害は忌避剤の適用によって減少していたが,食害以外の理由による枯れ下がりが多く発生し,樹高成長への効果は明らかにできなかった。ハルニレは,忌避剤によって6月29日までの食害本数が減少したほか,その後も食害の程度は軽減され,忌避剤を繰り返し散布するほど樹高成長が大きくなった。ミズナラは,食害に反応して新たな枝を伸長させ,その部分が食害を受けるため,忌避剤散布直後の調査のみ効果が認められた。また,開葉前の忌避剤散布も樹高成長の確保に有効であった。ヤチダモは,6月下旬まで枝を伸長させた後は、ほとんど樹高成長がみられず、6月以降に食害を受けても新たな枝を伸長させることはなかった。以上の結果から,2回の忌避剤散布を行う場合,ハルニレは6月と7月下旬から8月上旬のそれぞれ下刈り前後,ミズナラは植栽直後と枝が伸長した後の7月下旬から8月上旬の下刈り前後,ヤチダモは植栽直後と当年の枝の伸長がおおむね終了した6月下旬に散布することが望ましいと考えられた。いずれの樹種も,今回の調査地よりも食害が激しい地域では,枝の伸長に合わせて,さらに回数を増やす必要がある。
- 2012-03-00
著者
-
AKASHI NOBUHIRO
Hokkaido Forestry Research Institute
-
雲野 明
Hokkaido Forestry Research Institute
-
Unno Akira
Forestry Research Institute Hokkaido Research Organization
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