土壌生態系における細胞外DNA分子の挙動 第2部
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概要
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これまでの土壌中における自然形質転換に関する研究は、技術的な問題を含めた実験上の制約から、室内での単純なモデル系を利用したものがほとんどであった。当然のことながら得られた成果は、実際の土壌中のものとは大きく異なる可能性がある。今後はより野外に近い状態を実験室で再現しその土壌中での細胞外DNAの挙動について研究する必要がある。特にこれまでは純粋な鉱物へ吸着したDNAの安定性や形質転換能に関する研究が主体であったが、実際の土壌では大部分の鉱物は有機物と結合した有機無機複合体として存在していると考えられるため、有機無機複合体に吸着したDNAの形質転換能に関する詳細な研究が必要であろう。現在まで、土壌粒子に吸着したDNAがなぜ分解しにくいのか、そして分解しにくいにも関わらず形質転換が可能あるいは条件によっては形質転換が促進される理由はなにか、といった根本的な課題に対してすら明瞭な解答は得られていない。また培養可能な細菌を対象に研究が実施されており、土壌に生息する大部分の培養困難な細菌については全くと言っていいほど情報が欠如している。さらに菌類由来のDNAの挙動に関する研究例もきわめて乏しい。このように土壌中の細胞外DNAの挙動については未解決の課題が山積しており、今後のより一層の研究の進展が待たれる。
- 土壌微生物研究会の論文
- 2011-04-00
土壌微生物研究会 | 論文
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