農業用開水路壁面の健全度評価指標構築の課題
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概要
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農地・農業用水等の資源を農業・農村の基盤を支える社会共通資本として、将来にわたって良好な状態で保全管理する「農地・水・環境保全向上対策」及び「農業水利施設のストックマネジメント」の施策が進められている。このように、更新時期を迎える農業水利施設の施設診断や適時の予防保全対策の実施により、施設の長寿命化を図り、ライフサイクルコスト(LCC)を低減することが求められているが、LCC低減のためには、施設点検時点の健全度の把握だけではなく、将来の施設の劣化状態を予測すること(劣化予測)が重要である。農業水利施設のうち現場打ち鉄筋コンクリート製農業用開水路(以下「農業用水路(RC)」とする)は長大な延長を有することから、農業用水路(RC)の点検・診断においては、目視もしくは簡易な器具を用いた点検管理が主体となっている。施設の長寿命化とLCCの最小化算定に大きく影響する劣化予測の精度向上のためには、劣化予測の基礎となる水利施設の点検・診断情報を的確に収集することが重要である。このような背景の下、筆者らは農業用水路(RC)を対象とした目視による施設の劣化状態を判定する健全度の評価基準の確立や、簡易な計測調査から求まる健全度評価の定量的な指標づくりの取り組みを進め、水路壁面等の凹凸に対し、算術平均粗さ(Ra)を用いた健全度評価手法の提案及び健全度評価基準の提案を行ってきた。農業用水路(RC)の目視による劣化診断では、水路壁面の凹凸状態が構造物の劣化状態を判断する指標の一つと考えられるが、筆者らが行った2006年の調査での診断評価は定性的なものが主であった。このため評価者が異なる場合、診断の熟練度の違いによって健全度評価の結果が異なる可能性があることが指摘されている。これまで我々が3年間にわたり蓄積してきた現地調査データ(約1,400バレルを対象)と分析データを基に、供試体から求められた算術平均粗さ(Ra)の標準的な値の現場への適用性や、テストハンマーを用いたコンクリートの推定強度、ひび割れ及び中性化の深さについてこれらの劣化評価指標としての有効性について検討を行い、現時点におけるそれぞれの健全度評価指標を現場へ適用する際の課題を取りまとめたので技術資料として報告する。
- 2010-03-00
著者
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