有田ミカン産地の表層地質による地帯区分と土壌保水性
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概要
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表層地質によって、[地帯1]古生代の変成岩・深成岩、[地帯2]古生代の堆積岩、[地帯3]中生代の堆積岩、[地帯4]新生代の洪積層・沖積層、[地帯5]変成岩の棚田、の5地帯に区分した。調査園(n=77)の50%が根域30cm以下で、細根域20cm以下の園地率は64%であり、特に、地帯2、3で根の浅い園が多かった。いずれの地帯でも、根域直下の土層(下層)では、粗孔隙率15%未満、仮比重1.5以上、間隙率45%未満の緻密で硬い土壌が多く、根の浅い要因と考えられた。細根分布域(上層)の保水性については、地帯3で易有効水分量が40L/m3以下の園が多く、地帯1、2では難有効水分量の小さい園が多く、これらの園では乾燥しやすいと推定された。逆に、地帯4、5では保水力の高い園が多く、水ストレスを受けにくい傾向にあった。下層の保水性については、易有効水分量の小さい園が多く、とくに地帯2、4でその傾向が強かった。地帯2は、難有効水分量も他の地帯に比べて小さい園が多く、下層地盤が乾きやすいと推定された。次に、上層と下層の保水性データ16変数を標準化処理して、主成分分析を行った。その結果、中生代の堆積岩土壌、新生代の洪積層、沖積層をグループ化でき、それぞれの保水特性を明らかにできた。しかし、古生代の結晶片岩土壌や砂岩・泥岩互層では、園地によるばらつきが大きく保水特性を抽出できなかった。さらに、上層と下層の14変数を標準化処理してウォード法によるクラスター分析を行った。その結果、調査園を6つのクラスターに分割でき、各クラスターの保水特性には違いが見られた。しかし、クラスターと表層地質との関係は不明瞭で、同じ地質でも園による保水性のばらつきは大きかった。以上のことから、園による土壌保水性のばらつきは大きいが、できるだけ保水特性の傾向が似通った地質を合同して地帯区分すれば、表層地質による地帯区分を灌水情報の単位として利用することができると考えられた。
- 和歌山県農林水産総合技術センターの論文
- 2010-03-00
著者
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