ラットにおける誘起潜伏精巣の組織学的変化
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概要
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ラット精巣に対する温度処理が精子形成に如何なる影響を及ぼすかを調べるため、精巣の場所である陰嚢より1〜8℃高い温度下にある腹腔へ精巣を人為的に押し込み、結紮によって精巣の脱出を防いで腹腔内停留精巣を作成した。停留処置後5日、10日および15日目に精巣を摘出し、組織標本を作製して精巣精細管における組織像を観察した。精巣の停留処置を行わなかった片側の陰嚢内精巣は対照として用いた。その結果、精巣停留処置後5日目の精細管で、すでに各種精細胞に退行的変化が観察され、特にその変化は精母細胞、精娘細胞、精子細胞および精子に出現した。また、精細胞の変化に伴って貪食作用を有する巨大多核細胞が出現した。精細胞における退行変化は精巣の腹腔内停留期間が延長するにつれ顕著になり、処置後15日目の精細管では精祖細胞以外の精細胞は完全に消失した。同様な退行的変化は精子の通路である精巣上体管においても観察された。処置後5日目で精巣上体内精子集落に巨大多核細胞が出現し、処置後10日では精子集落が赤色球形細胞に変化し、15日目では精巣上体管は精細胞を欠き、その内腔は空白を呈した。