日中の都市高齢者における主観的健康感が生命予後に及ぼす比較研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
目的 高齢者の生命予後に及ぼす主観的健康感について、日本と中国の二つの都市間比較をすることを研究目的とした。方法 調査対象は、伊勢原市に住む60 歳以上高齢者1,894 人を、中国瀋陽市に住む2,766人とし、2000年から2003年までの三年半の生存を追跡した。分析方法は、Cox比例ハザードモデルを用い、生存規定要因として、性別、年齢階級、身体状況、居住形態、生活習慣とともに主観的健康感を含め、生命予後に対する二都市間の違いを解析した。結果 生命予後に対しての各変数の比例ハザード比をみると、主観的健康感が「健康ではない」生命予後の比例ハザード比は、「健康である」に対して伊勢原市は2.52(95%信頼区間CI:1.55-4.10、以下CIと示す)、瀋陽市は1.56(CI:1.06-2.28)であり、共に統計学的にみて有意であった。女性に対する男性比例ハザード比は伊勢原市は2.43(CI:1.41-4.18)と有意であったが、瀋陽市では差が見られなかった。「配偶者と同居していない」生命予後の比例ハザード比は、「配偶者と同居している」に対して伊勢原市は1.78(CI:1.07-2.97)、瀋陽市は1.60(CI:1.09-2.36)であり、共に統計学上有意であった。年齢階級は両市共に有意であった。疾病治療状況別に見た比例ハザード比は、瀋陽市は「脳卒中有り」は2.10(CI:1.38-3.19)、伊勢原市は「糖尿病有り」は2.18(CI:1.23-3.85)と共に有意であった。結論 交絡因子を調整しても、二都市ともに都市高齢者の主観的健康感は、三年半後の生命予後の予測因子である可能性が示された。また、生命予後に対する性別の意義は、瀋陽市に比べて伊勢原市で強く、生活習慣と疾病タイプの影響は二都市間で異なる傾向が見出された。配偶者との同居では、両市とも生存に有意な関連が見られた。The purpose of this study was to compare the influences of subjective health on mortality between Japanese and Chinese urban elderly. The three and half year( 2000-2003) follow-up survey on the survival status was conducted with 1,486 Japanese elderly people in Isehara city, and 2,766 Chinese elderly people in Shenyang city. Controlled those characteristic variables as sex, age, health, residential conditions and health practices in Cox's proportional hazards model, we compared the influences of subjective health toward elderly mortality between two data and found the following results. First, as for the subjective health, “feel not healthy” toward “feel healthy” were 2.52( Confidentuial Interval:1.55-4.10) in Isehara and 1.56( CI:1.06-2.28) in Shenyang. Second, sex factor was only significant in Isehara’s data with 2.43( CI:1.41-4.18) men toward women. Age factor was significant in both cities. Third, in the aspect of health conditions, apoplexy was significant in Shenyang about 2.10( CI:1.38-3.19). In Isehara, diabetes showed significant at a level of 2.18( CI:1.23-3.85). A conclusion suggests that subjective health is a predictive factor toward mortality as for both Japanese and Chinese urban elderly. What’s more, it showed that gender effect is significant in Isehara. Health practice and disease variables showed different influences in the two cities.
著者
関連論文
- 山間部に暮らす高齢者の交流状況と生命予後との関連
- ヘルス・プロモーションにおける住民参加とエンパワーメント
- エンパワーメントに関する理論と論点 (特集 人々の健康を支援する方法)
- 市町村地域把握の意義 (特集 保健活動における地域把握の意義と方法)
- 16市町村における在宅高齢者の知的能動性低下と家族の痴呆判断に関する研究
- 特別記事 第59回日本公衆衛生学会特別講演 ジョージ A カプラン博士「老人の健康を左右するもの--アラメダ研究での行動・心理・社会・経済的要因から」の報告
- がん診療連携拠点病院における外来化学療法の現状と課題
- 在宅高齢者の健康習慣と生命予後の関連 (特集 都市の環境問題)
- 主観的健康感が高齢者の生命予後に及ぼす影響 (特集 人々の健康を支援する方法)
- 主観的健康感を中心とした在宅高齢者における健康関連指標に関する共分散構造分析 (特集 人々の健康を支援する方法)
- 地域における介護予防の対象とその意義--高齢者のQOLの維持は可能か (特集 介護予防)
- 高齢者における社会的ネットワークと生命予後との関連 (特集 東京の社会構造と都市生活)
- 日中の都市高齢者における主観的健康感が生命予後に及ぼす比較研究