〈原著〉機械的ストレスによる軟骨変性に対するヒアルロン酸の保護作用と細胞内情報伝達機構
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概要
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[抄録] 変形性関節症の治療薬としてヒアルロン酸(hyaluronan,HA)の関節内注入療法が広く使用されている.しかしその作用機序については不明な部分が多い.当教室では変形性関節症の病因に機械的ストレスが重要な影響を及ぼすこと,活性酸素種(reactive oxygen species,ROS)がその情報を伝達することを明らかにしてきた.そこで本研究では,HA の作用を機械的ストレスに対する軟骨細胞内情報伝達機構の側面より検討することとした.ウシ関節軟骨に対する圧迫負荷はROS産生を増加させ,type 2 collagenやaggrecanの遺伝子発現を抑制した.HAはこれらの基質合成能を回復させるとともに,ROS産生を抑制した.基質合成調節因子であるSOX9 は,圧迫負荷により発現量が減少し,HA 添加により回復した.この現象は抗HA 受容体抗体にて打ち消された.また,圧迫負荷に伴うSOX9 の発現量の低下はMitogen activated protein kinases(MAPK)の一つであるP38の阻害剤添加でも回復した.さらに,圧迫負荷によりリン酸化P38,蛋白質分解酵素(matrix metalloproteinase,MMP)であるMMP-13の発現が亢進し,HA 添加により抑制されることが明らかにされた.この過程にもHA 受容体およびP38 MAPK が関与することが明らかにされた.以上の結果より,軟骨細胞に対する機械的ストレスはROS 合成亢進とP38 MAPK リン酸化へと変換され,それぞれ基質合成抑制とMMP13の産生促進となり,最終的に軟骨変性を惹起する.これに対して,HA はその受容体であるCD44を介してROS 産生抑制およびP38 MAPK リン酸化抑制を来すことより,軟骨保護作用を発揮している可能性が示唆された.
著者
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