南仏セットの観光戦略と観光イメージに使われる色彩
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概要
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本稿は,南フランス・ラングドック地方の港町セットを例に,色彩が観光にとって,どのような役割を担っているかを考察したものである。セットは建物のファサードに多様な色が塗られている町だが,北欧やイタリアにあるような色鮮やかさはない。それでもセットには,カラフルさに依拠する観光戦略がみられる。その第一は市の公式ロゴである。セットでは近年カラフルなロゴを作成し,それを観光局のパンフレットやホームページに積極的に使っている。デザイン的にも配色論を用いたもので,色彩が意識されている。このように,単なる記号にすぎないデザインが多くの場所に用いられることで,町のカラフルさを高めるのに貢献している。第二にパンフレットの作りである。パンフレットには無数のロゴが散りばめられ,いわゆる暖色系と寒色系の写真が効果的に配置され,運河沿いのカラフルな家並みも実際より彩度や明度を高くして印刷され,町のイメージをカラフルにしている。さらにセット観光局は,言説面でもカラフルなイメージを流布させている。ただし,単に街並みのカラフルさに関する言説に留まらず,歴史的にイタリア系移民が多く,ヴェネツィアのように運河が縦横に走り,ナポリのように洗濯物を干す斜面の地区があって,町に活気と多様性があるという言説を用いることで,比喩的にカラフルさを強調している。もちろんセットの色彩は,実際に青い海と潟と空に囲まれるという地勢的条件,赤いトマトや黄色土が豊富という地理的事実,さらには運河に停泊する色とりどりの船や,運河沿いの店のパラソルの色にまで及ぶ。こうしてセットでは,物質,記号,象徴,比喩,言説などの多次元においてカラフルさが観光イメージになっている。色は形のないものであるが,だからこそ,セットは色の持つ現代的な柔軟性や汎用性をうまく使いこなしている。
- 2011-03-30
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