IPO における大手証券会社の引受と初期収益率 : 利益相反仮説の検証
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概要
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論文IPO における公開価格決定方式の1つであるブックビルディング方式では,引受主幹事が新規公開株の割り当てに関して裁量を持つだけでなく,公開価格決定に大きく関与する。したがって,引受主幹事が自身の利益を最大にするように公開価格を決定している可能性が高い。この想定の下,ブックビルディング方式下における高い初期収益率を説明する仮説として「証券会社による利益相反仮説」がある。これは,売買関係業務を主たる収入源とする証券会社が引受主幹事を務めた場合,売買関係業務の顧客である投資家の利益を図るべく,発行企業の利益を犠牲にして公開価格を意図的に低く設定するという仮説である。本稿では,1998年度から2007年度までの全市場におけるIPO を対象に利益相反仮説の検証を行った。そして,2003年度以前では,売買関係業務において利益供与を図るべき大口顧客を抱え,かつ引受市場で支配力を持つ大手証券会社3社が引受主幹事を務めた場合,初期収益率が有意に高くなるという結果を得た。しかし,2004年度以降では,このような利益相反の証拠は得られなかった。
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