<原著>マルチディテクターCTを用いた川崎病冠動脈病変の検討
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概要
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[抄録] マルチディテクターCT(MDCT)は1998年に開発された診断装置であり,冠動脈疾患の形態評価のスクリーニング方法として定着している.川崎病は小児期の急性全身性血管炎であり,一部の症例は炎症の結果として冠動脈瘤を形成し,年余を経て狭窄や閉塞など多彩な冠動脈病変に進展し,後遺症として残存することがある.この川崎病冠動脈病変の診断にMDCTが実用可能かを検討した.対象は33例に対する45回の撮影とし,描出範囲,病変,放射線被曝,社会的背景と医療費について検討した.描出範囲の検討としては,主要冠動脈の描出率は95.5%であった.病変の検討では101病変を観察し得て,石灰化は鋭敏に描出し得た.放射線被曝の検討では,それまでのRetrospective gating scan法の平均20.05mSvがStep and Shoot法への変更により平均6.59mSvと有意に被爆量が減少した.社会的背景と医療費の検討では,MDCTは外来での施行が可能であり,医療費自己負担額はカテーテルによる冠動脈造影(CAG)よりも少なかった.川崎病冠動脈病変をもつ年長から成人患者の追跡手段として,MDCTはCAGにとってかわるものではないが,運用方法を考えた利用により大きな利点がある.MDCTが川崎病冠動脈病変の診断に占める役割は今後も大きいと考える.