視覚障害を持つ短期大学新入生のコンピュータに対する経験と態度
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概要
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コンピュータリテラシーの必要性と意義は,視覚障害者にとっても晴眼者と同様である。コンピュータは,視覚障害者の抱える大きな不便さのひとつである読みの制限もしくは文字情報についての障害を軽減することができる。本研究では,視覚に障害を持つ短期大学新入生に対して,入学前のコンピュータ使用の経験や知識,コンピュータ使用についての態度などを調査した。 被験者は視覚に障害を持つ37名の短期大学入学生であり,コンピュータ使用の経験や知識,コンピュータ使用についての態度に関しての調査を質問紙法によって行った。また,分析に必要と考えられた被験者個々の情報についてもたずねた。短期大学入学時には,半数の学生がコンピュータの初心者であり,残りの半数の学生が入学前に1年以上コンピュータを使っていたことがわかった。コンピュータ使用経験と使用頻度の項目を間隔尺度と考えて相関係数を求めて両者の関係をみたところ,r=0.827(df=35,p<0.01)であった。パソコンのソフトウエアについての知識や経験をきいたところ,「ワープロ」を使ったことのあるものは約80%,「電子メール」は70%,「インターネット閲覧ソフト」が70%で,これらのアプリケーションはよく使われていた。それらにくらべると,「表計算ソフト」,「データベース」,および「プレゼンテーションソフト」は,これまでほとんど使われていなかったことがわかった。また,視力障害程度と視覚障害補償システム使用との間には有意な関係があることがわかった。さらに,コンピュータの使用経験,知識,および態度に関する変数がお互いにどのような関係を持っていたか,あるいはコンピュータ使用に関する変数が視覚障害に関する変数とどのような関係にあったかを主成分分析を用いてみてみた。その結果,第1因子に高い負荷を示したのは,コンピュータの使用経験と知識に関する項目であった。第2因子は視力と好みの文字サイズと器械類の操作の得手不得手に負荷していた。第3因子は,コンピュータ使用上の自信と器械類の操作の得手不得手に関するものであった。第4因子は,数学が苦手かどうかについてのもので,この変数に関連が深い変数はみられなかった。第5因子は,視野と自分の自由になるコンピュータの有無に関係する因子となっていた。今回の因子分析の結果をみる限り,視覚障害がコンピュータ使用についての態度に影響しているという傾向はみられなかった。しかしながら,入学後のコンピュータ学習がこれらの傾向を変える可能性がある。
- 筑波技術短期大学学術国際交流委員会の論文
著者
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