指導される「教養」 : 二つの少年少女向け世界文学全集にみる「文学」の役割
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概要
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一九五〇年代から六〇年代にかけて刊行された二つの少年少女向け世界文学全集について、地域割り主体の巻構成となっているなど、先発の創元社版の企画を後発の講談社版が受け継いでいることを前提とし、後者には前者にない「読書指導」のページが付されている点に着目し、その内容を追究した。その結果、前者においては、出版社-家庭-学校の三者が「子ども」読者を囲い「読書」への期待を向けており、発信者側が「教養」の「形成」を強く念頭においていたのに対し、後者では学校における教師の「指導」が文学作品享受に付随していること、該当ページからは「特権的子ども読者の存在」が一般読者に印象付けられること、「現前テクスト透過の作品把握」の可能性が大となることなどが抽出されてきた。これらのことから、「文学」の果たす「教養」形成の役割が、自発的な内的成熟への期待から指導者が導く外部表出推奨へと変化したことが明確となった。
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