ミトコンドリアの生合成と分裂・融合の調節機構
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概要
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ミトコンドリアは外膜,内膜,膜問スペース,およびマトリクスの4つのサブコンパートメントから成る複雑な構造をしており,真核細胞において好気的なATP産生に関るばかりでなく,脂質,ヘム,アミノ酸,さらに様々な酵素活性中心となる鉄一硫黄クラスターなどの生合成にも関る細胞の生育に必須のオルガネラである.一方ミトコンドリアは,その膜間部にcytochrome c, AIFなどさまざまなアポトーシス関連因子を貯留し,それをミトコンドリア外に放出することでアポトーシス進行に中心的な役割を果たすオルガネラでもある. ミトコンドリアは哺乳類では約1500種類,酵母では約800種類の蛋白質から構成されているといわれているが,構成蛋白質の99%は核のDNAにコードされ,哺乳類では内膜の呼吸鎖を構成するわずか13種類の蛋白質が自身の持つDNA(mtDNA)にコードされているに過ぎない.従って大半のミトコンドリア蛋白質は細胞質のリボソームで合成され,ミトコンドリア表面の受容体にまで運ばれた後に,さらに外膜と内膜の蛋白質輸送装置の働きによってそれぞれのサブコンパートメントにまで運ばれ,そこで機能する.ミトコンドリアはまた極めてダイナミックに形態を変化させる.たとえば細胞の複製に際しては断片化して娘細胞に分配され,接合に際しては速やかに融合する.さらに細胞の分化,病変,環境変化などに応じて構造を変化させ機能変換を行う.そこにはミトコンドリアの外膜と内膜のダイナミクスを制御するシステムが存在するはずである.近年ミトコンドリアの形態調節機構がアポトーシスの進行と密接に関係していることが明らかになりつつある. ここでは,ミトコンドリアへの蛋白質輸送とミトコンドアの融合分裂の制御機構について概説したい.
- 2006-01-25
著者
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