富美文庫蔵「徒然草」考: 挿絵の比較を中心に
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概要
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本稿で取り上げる富美文庫蔵「徒然草」五冊は、筆者が二〇〇九年三月に紹介した新出の奈良絵本である。烏丸本系の本文を持ち、挿絵は各冊に十五図ずつ、合計七十五図ある。これは現在知られている奈良絵本「徒然草」のなかでは、蓬左文庫所蔵本に次ぐ多さである。本稿では、まず本作品の概要を紹介する。次いで、その挿絵を慶安五年(一六五二)に出版された「徒然草」の注釈書である「なぐさみ草」、蓬左文庫所蔵本、及び二〇〇六年に有吉保氏によって紹介された奈良絵本と比較する。これにより、これら四作品の中では「なぐさみ草」の図様に最も先行性が認められること、他の三作品はいずれも「なぐさみ草」を典拠とすること、ただし互いに独自性を有していることから、これら三作品の間には直接的な転写関係は想定し得ないことなどを明らかにする。また、それぞれの作品の特質についても若干の指摘をする。
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