アダム・スミスにおけるケインズ的問題―総需要不足と金融不安定性をめぐって―
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概要
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Adam Smith is generally regarded as an economist totally opposed to J. M. Keynes. However, Smith stood quite near Keynes and Keynesians rather than modern neo−classical economists with regard to some issues such as lack of aggregate demand and financial instability. Smith did not insist that monetary and public−finance policies were necessary in order to increase demand. However, it does not mean that Smith did not make much of demand. Smith thought that after the abolition ofmercantilist policy, effective distribution of capital and labor would increase labor demand and give rise to wages, and consequently increase people’s demand for consumer goods. Smith also thought that laissez−faire policy would expand foreign trade and increase foreign demand. In addition, when Smith was faced to the bankrupt of the Ayr Bank, he recognized the instability of capital market. He came to think that not only free competition of banks but also legal regulations and improvement of business morals were essential to stabilize the financial system.一般にケインズの対極に位置すると考えられているアダム・スミスは,総需要不足と金融不安定性の問題をめぐって,現代の新古典派よりもむしろケインズやケインズ派に近い考え方をしていた。スミスはステュアートのように金融・財政政策を通じた総需要拡大を主張しなかったが,そのことはスミスが総需要の問題を考慮しなかったことを意味するわけではない。スミスは,重商主義政策の撤廃による自由で効率的な資本と労働の配分が,労働需要の増加と賃金の上昇を通じて大衆的消費需要を拡大し,さらに自由貿易政策による貿易の拡大も総需要を拡大すると考えていた。またスミスは,エア銀行の破綻処理の経験を通じて金融市場の不安定性を認識し,金融システムの安定化のためには銀行の自由競争だけでは不十分であって,政府による一定の法的規制と銀行の企業モラルの改革が必要であると考えるようになったのである。
- 2003-09-10
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