20世紀アメリカ雑誌におけるマーク・トウェイン像 ― 書誌的研究 ―
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概要
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本研究は、1910年におけるマーク・トウェインの死後から21世紀の今日にいたるアメリカの一般向けの雑誌に表れた「マーク・トウェイン像」を明らかにする試みである。本稿では以下の3つの問題意識を念頭に考察していく。(1)1910年におけるマーク・トウェインの死後、彼のイメージは一般のアメリカ人の中で如何に形成されていったのか。(2)トウェイン像のどの部分が不変でどの部分が変化しているか。(3)20世紀アメリカにおけるトウェイン像の形成において、同時代のアメリカの如何なる文化的・社会的影響があったか。アメリカにおけるマーク・トウェイン像を解き明かす試みは、これまでにもいくつかなされてきた。例えば、この分野のトウェイン研究の権威Louis J.Buddは、Our Mark Twain (1983年)の中で、インタビュー・広告・死亡記事やトウェインをモデルにした風刺画など豊富な資料を駆使することで、生前のトウェインが着実に自己のトウェイン像をアメリカに浸透させていった事実を明らかにした。このようなBuddの関心は近年においても変わらず、その成果は論文"Mark Twain as an AmericanIcon"1995年)に、最近の研究動向にも目を配った形でまとめられている。また、Sara de SaussureDavis編集による論文集The Mythologizingof Mark Twain (1984年)も同様の関心からの成果である。一方、トウェインの死後におけるトウェイン像に関してもいくつかの研究がなされてきた。その代表といえる成果がShelley Fisher FishkinによるLighting Out for the Territory (1996年)で、映画や広告、純文学から大衆SF小説など、ありとあらゆるメディアに現われたトウェイン像の紹介に1つの章が割かれている。また、対象をもう少し絞ったものとしては、トム・ソーヤ映画群の分析を通して、アメリカの象徴としてのトウェイン像の形成を考察したFrank Perryによる博士論文、さらにハック・フィン映画を批判的に紹介・検討したClyde Hauptによる研究などが90年代に現れた。しかし多くの先行研究がある中で、20世紀の一般・大衆雑誌におけるトウェイン関連記事を網羅的に紹介し、そこに表れたトウェイン像やその変化を考察する論考は存在しない。唯一の例外は、Roger AsselineauによるThe Literary Reputationof Mark Twain from 1910 to 1950(1954年)だが、この研究で紹介されている雑誌は、学術誌や総合雑誌などのいわゆるハイブラウな雑誌が多く、一般大衆雑誌に掲載されたトウェイン関連記事については殆ど触れられていない。結果として、一般のアメリカ人のトウェイン像というよりも、知識人のトウェイン文学評価変遷史といった内容に近い。加えて、考察の対象は20世紀前半までで、20世紀後半に関して言及はない。こういった先行研究の状況を考慮すると、これまで顧みられることの少なかった一般向け20世紀アメリカ雑誌に掲載されたトウェイン関連記事を今回、書誌的に整理し検討することは意義あることと思われる。尚、本稿では、アメリカ国内で収集した200件以上のトウェイン関連雑誌記事を時代別に分類し、その中から重要と思われる30件ほどの記事を中心に検討する。また、資料収集に関しては、雑誌検索インデックスとしてはもっとも網羅的と思われるReader's Guide to Periodicals に掲載された記事を中心とした。
- 2003-03-20
著者
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