慢性疼痛発生メカニズムの新しい展望
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
痛みは生体の警告システムとしてまた防御システムとして重要な役割を果たしているが, 発生学的には免疫系が最初に確立され, 続いて神経系と内分泌系が発達してきたものと考えられる. 神経を介する痛覚系は最も迅速に警告を発し, また意識にのぼるシステムである. それ故, 知覚された刺激は組織侵害性が強く, 早期に対処する必要がある. 一般的に臨床の現場で訴えられる痛みは何らかの疾患に伴う症状の一つで, 病気が治癒すれば痛みも消退するのが普通である. そのため, たとえ患者が痛みを訴えてもその基となる病気を治すことに腐心し, 痛みそのものに対する治療は軽視される傾向は依然として存在するのが現状である. しかしながら, 癌性痙痛にみられるように, 痛みは最も強いストレスであり免疫系に対する抑制作用が強い. そのため痛みに対する適切な治療は免疫系の維持, それによる癌の進行の抑制に大きく関わっている. このように痛覚系は生体の防御にとって必要不可欠なものであるが, 一方, 痛みそのものが治療の対象になることがある. いわゆる慢性疼痛と呼ばれる病態である. 多くの痛みは侵害性疼痛と呼ばれ, 組織損傷時の一過性の痛みで, 多くの場合傷の治癒と共に消失する. しかしながら, 一部の侵害性疼痛は傷が治癒した後にも持続し, 慢性疼痛へと移行していく. その発生機序に関しては最近多くの新しい知見が報告されている. また, 痛み刺激を感受する受容体の研究も急速に進み, 今後, 慢性疼痛発生メカニズムを基盤とした新しい治療法や治療薬の開発が大きく発展するものと期待される. そこで, 本総説では最初に痛みの伝達経路, 痛覚系の特殊性などを概説し, 次いで最近明らかにされてきた痛み受容体について述べ, 最後に様々な慢性疼痛モデル動物を用いて明らかにされてきた慢性疼痛の発生メカニズムについて紹介したい.
- 2006-06-25
著者
関連論文
- 脊髄痛覚伝達におけるセロトニンの作用機序 : in vivo パッチクランプ法を用いた解析
- In vivo パッチクランプ法を用いたラット脊髄膠様質細胞における抑制性シナプス応答の解析
- In vivoパッチクランプ法を用いた痛みのメカニズムの解析
- In vivo パッチクランプ法を用いた脊髄膠様質細胞における抑制性シナプス応答の解析
- In vivo パッチクランプ法を用いた脊髄痛覚伝達機序の解析
- 脊髄内痛覚伝達におけるATPとアデノシンの相互作用
- アデノシンによる脊髄後角痛覚情報伝達抑制の作用機序
- 3-P2-15 ラット脊髄運動ニューロンに対するバクロフェンの抑制効果(脊髄損傷および脊髄疾患・研究1,ポスター,一般演題,実学としてのリハビリテーションの継承と発展,第44回日本リハビリテーション医学会学術集会)
- 2-P3-17 正常ラット脊髄痛覚伝達に対するバクロフェンの鎮痛効果について(基礎(2),ポスター,一般演題,リハビリテーション医学の進歩と実践,第43回日本リハビリテーション医学会学術集会)
- 2-P3-16 炎症モデルラットを用いた脊髄痛覚伝達系における慢性疼痛の機序解析(基礎(2),ポスター,一般演題,リハビリテーション医学の進歩と実践,第43回日本リハビリテーション医学会学術集会)
- 脊髄における痛覚伝達機構
- ラット脊髄膠様質におけるA線維とC線維の入力の生後発達に伴う可塑的変化
- 成熟ラット脊髄後角膠様質細胞におけるグリシン作動性抑制性シナプス伝達に対するムスカリン作動薬の作用
- ラット脊髄膠様質におけるGABA作動性シナプス伝達に対するミダゾラムの作用
- ラット脊髄膠様質におけるグルタミン酸作動性シナプス伝達に対するバクロフェンの作用
- アロディニアの機序
- NMDAレセプターεサブユニット欠損マウス脊髄スライス標本を用いたWind up現象の解析
- 脊髄膠様質におけるムスカリン作動薬および抗コリンエステラーゼ薬によるGABA放出促進
- 末梢神経切断ラット脊髄後角における疼痛伝達の可塑的変化
- 脊髄膠様物質におけるエンケファリンの節前性痛覚抑制機序
- 卵巣摘除ラットの痛覚過敏とカルシトニンによる鎮痛作用機序
- 卵巣摘除で誘発される痛覚過敏の発生機序
- 慢性疼痛発生メカニズムの新しい展望
- マウスおよびラット脊髄後角細胞からの in vivo パッチクランプ記録法
- In vivo パッチクランプ記録法の実際と応用 : 大脳皮質体性感覚野のシナプス応答
- 脊髄痛覚伝達系の可塑性--慢性炎症による痛覚過敏の発生機序 (〔2002年〕10月第1土曜特集 慢性疼痛--病態と治療法) -- (基礎から考える慢性疼痛の病態)
- 慢性炎症ラット脊髄後角の可塑的変化と痛覚過敏
- 脊髄後角深層細胞に発現するATP P2X受容体の機能意義
- 脊髄可塑性と慢性疼痛 (特集 第39回脳のシンポジウム) -- (疼痛研究の最前線)
- 感覚系 痛覚受容イオンチャネル--痛み刺激のコーディングとイオンチャネル (〔2002年〕6月第5土曜特集 イオンチャネルの最前線) -- (臓器でのイオンチャネルの働きと疾患)
- ラット大脳皮質体性感覚野からの in vivo パッチクランプ記録法
- 特別講演 下行性痛覚抑制系の機能
- In vivo パッチクランプ記録法の薬理学への応用
- 脊髄における痛覚伝達機構
- In vivo パッチクランプ記録法 : 感覚伝達機序のシナプスから分子レベルでの統合的解析
- 実験的虚血負荷によるラット脊髄後角細胞におけるグルタミン酸放出抑制機序
- ノルアドレナリンによる脊髄後角痛覚情報伝達抑制の作用機序
- ラット脊髄後角における興奮性シナプス伝達に対するノルアドレナリンの作用
- ノイロトロピンによるセロトニン下行性疼痛抑制系の賦活化と鎮痛作用
- 脊髄TRPA1およびTPRPV1の活性化による痛覚シナプス伝達の調節
- ラット後根神経節細胞を用いた局所麻酔薬の活動電位抑制効果の比較 (第30回脊髄機能診断研究会)
- 脊髄内痛覚伝達におけるGABAB受容体の役割
- カルシトニン製剤 カルシトニンの鎮痛作用機序に関する最近の知見 (新時代の骨粗鬆症学--骨折予防を見据えて) -- (骨粗鬆症治療薬の最近の知見)
- 慢性疼痛と神経栄養因子--炎症,神経障害における可塑的変化とBDNF (第1土曜特集 難治性疼痛と闘う--研究と治療の最前線) -- (痛みを切る--根底にある分子メカニズム)
- パッチクランプの新手法と今後の展開 : パッチクランプ法
- Mechanisms for the Anti-nociceptive Actions of the Descending Noradrenergic and Serotonergic Systems in the Spinal Cord
- 痛覚伝達路の可塑性と神経栄養因子 (第5土曜特集 痛みシグナルの制御機構と最新治療エビデンス) -- (疼痛の生理機構と分子メカニズム)
- Somatostatin directly inhibits substantia gelatinosa neurons in adult rat spinal dorsal horn in vitro
- ラット脊髄膠様質細胞に誘起されるAδ線維およびC線維EPSCに対するノシセプチンの作用
- 慢性痛の発生機序 : 神経生理の立場から
- 脊髄スライスおよびin vivoパッチクランプ法を用いた脊髄後角における痛覚伝達系の機能解析 ((社)日本麻酔科学会第49回大会講演特集号) -- (学術講演)
- 脊髄GABA受容体の機能とその修飾 ((社)日本麻酔科学会第54回学術集会講演特集号) -- (シンポジウム:脊髄の受容体と機能)
- In vivo and in vitro Patch-clamp Recording Analysis of the Process of Sensory Transmission in the Spinal Cord and Sensory Cortex
- Sensory processing and functional reorganization of sensory transmission under pathological conditions in the spinal dorsal horn
- in vivo パッチクランプ法の実際と適用
- 脊髄痛覚の伝達と難治性疼痛
- Asian Pain Symposium印象記
- In vivo パッチクランプ法による脊髄痛覚伝達機序の解析
- 痛覚系の可塑性 (特集 痛みのメカニズム)
- 脊髄膠様質の機能 (第44回日本麻酔学会総会より"特別講演""シンポジウム""パネルディスカッション""教育講演"特集号) -- (パネルディスカッション-3-「疼痛機序と疼痛管理最前線」の話題)