文字の還元と記号の生成
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
言語を「記号」と見なすことは、言語に関する普遍妥当的な観点をとることでもないし、何らかの中立的な立場に立つことでもない。それは、歴史的相対性を帯びた見方に過ぎない。この言語記号観を克服するためには、これまで単に外面的なものと捉えられていた言語と文字との関係を、認識主観の形成過程における両者の相互作用という観点から捉え直さなければならない。というのも、言語記号観は、文字というものを或る言語がもつ固有の音的構造の単なる受動的な反映として扱うことで成立しているからだ。しかし、実際には、文字は言語構造を一方的に押し付けられることで成立する媒体ではなく、個別の言語的諸現象を同一の文字の下に凝集し、統合する役割も果たしている。文字は、この役割によって音声を分割し分類するための音声カテゴリー1 を形成し、言語の構造的把握を可能にしているのである。したがって、言語と文字の間には、いわば循環的な相互作用が働いているのである。以下では、まず、言語を「記号」に変容させるための諸操作について素描し、その後、ソシュールが言語学の対象からの文字を排除しようとしたことの意味を考察する。
著者
関連論文
- アルファベットの成立と音声カテゴリー
- 文字の還元と記号の生成
- 文字の獲得と音声カテゴリーについて
- 日本語音韻論の不整合性について
- 音声中心主義と日本語音韻論
- 文字の構成的機能について
- 言語の表記と理念化について
- 音声認識ソフトが「記号」にとって意味するもの
- 音声は、認識の「対象」か?