果樹作経営の適正規模に関する研究
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概要
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果樹作専業経営の長期的な経営目標は,最も長期にわたって固定的な専従家族労働力に帰属する残余純収益水準をできるだけ向上させることにあるとみてよい. 労働過剰段階では,土地規模を固定したままで,いわゆる土地節約技術を用いて労働集約度を高める対策が効果的であったが,1960年代の労働不足段階に入ると,土地規模を拡大し,これを基盤として労働節約的技術を採用する対策が,上記の経営目標を達成するために一層効果的になってきたのである. 各果樹作について,特定生産地域の農家群,特定経営年度をとってみると,その経営活動の成果を制約する自然,価格,技術,組織などの経営環境条件および経営内部条件に対応して,家族労働力純収益最大化目標を実現しうる点で適正土地規模がきまるのである. 労働節約的大農技術の進歩とともに,この意味の適正規模は年々上昇する傾向を示しているが,本稿では1962~1966年の調査資料を用いて,モモ作,ブドウ作,ミカン作各部門の適正規模を計測した. ついでこの適正規模と現実の平均規模を比べてみた. その結果,果樹作経営においては主に作業工程における技術的要因によって規模拡大には一定の有利性限界―適正規模―があること,また果樹作において種類や品種によって技術的特性が異なるために,適正規模は一様ではなく,ミカン147a,ブドウのデラウェア73a,キャンベルス49a,モモ23aなどであるように,作業工程において労働の集中度や苦痛度が大きい果樹作ほど適正規模が小さくなっていることがわかった. また適正規模を調査農家6平均規模と比べてみると,ミカン2.2倍,ブドウ1.5倍,モモ1.4倍と大きいことがわかった. このように勇実の農家の平均規模が,適正規模に比べてかなり小さくなっている理由は主として将来純収益の流れを大きく割引くという農家の安定性選好と,土地,資本,雇用労働市場の不完全性によるものであることを明らかにした. 果樹作経営において,家族労働力純収益水準を向上させていくためには,現実的には農家の平均規模を適正規模に収れんさせる対策を示し,長期的には適正規模そのものを拡大させていく対策を提案することが必要になるのであるが,これらの課題については別の機会に譲りたい。
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岡山大学農学部 | 論文
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