人工授精に於けるHyaluronidaseに関する研究 (2)添加Hyaluronidaseが牡牛精子の活力に及ぼす効果
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概要
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ホルスタイン種4頭,和牛1頭から成る5頭の牡牛から28例の精液を得た.これらの精液を卵黄クエン酸ソーダ稀釈液で5倍,20倍又は50倍に薄め,之にH-ase製剤を添加し6℃に保存したが3例のみは38℃に保存した.H-aseとしては持田製薬株式会社の睾丸性H-aseであるスプラーゼを用いた(その単位は V.U.M.で示される).此の研究に於て,100V.U.M.から100,000V.U.M.にいたる種々の量のH-aseを稀釈精液1cc.に対し添加した.精子の活力は顕微鏡標本加温装置を用い37℃で懸滴標本につき,本邦で普通に用いられている方法により算定した. 5倍稀釈精液に対し種々の量のH-aseを加え6℃に保存したとき,50,000V.U.M.位の量のH-aseは精子の活力に対し推計学上対照区との間に有意の差を与えなかつた.併し乍ら,活動精子の百分率のt検定に於けるPの値からして略50,000V.U.M.以上になると精子の活力は衰える傾向がみられた.此の活力の減少は20倍又は50倍稀釈の場合はあらわれ難い様に思われる.精子の活力に於ける此の減少はH-aseそのものの毒性と云うよりも寧ろ大量のH-ase製剤添加によりて生ずるかも知れない滲透圧の変化か又は酵素製品に含まれている不純物の影響の何れかによるものの様に思われる. 38℃に保存した場合はH-ase添加区も対照区と同様,共に略10時間で精子は活力を失い両者の間に差はみられなかつた.以上簡単に要約すれば,稀釈した牡牛精液1cc.に対して50,000V.U.M.位までのH-aseの量は6℃の貯蔵に於いて精子の活動性に対し有意な影響を与えない.従つて,略これ位のH-aseの量を精液に添加しても人工授精に於いて精子に有害ではない.本実験を行なうにあたり,スプラーゼの提供を受けた持田製薬株式会社,並びに精液試料を戴いた岡山県岡山種蓄場に深謝すると共に石井彰君の御助力に感謝する。
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岡山大学農学部 | 論文
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