作物の塩害生理に関する研究 (第10報)水稲の塩害発現に対する環境条件の検討
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概要
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水稲の塩害発現におよぼす各種環境要因の影響について検討したが,得られた結果はほぼ次のとおりであった. 1.20,40,60meq/lの硫酸ナトリウムまたは塩化ナトリウムを含む培養液で砂耕栽培したが,完熟期における収盤は塩類濃度の増大に伴って低下し,とくにCl-60区における被害が著しかった. 茎葉中に吸収された各種無機成分を分析した結果,塩化物区では硫酸塩区よりナトリウムの吸収が多く,塩化物高濃度区で生育が悪かった直接的原因と考えられた. またカリウムは塩類濃度の増大とともに含量は低下したが,その傾向は塩化物区で著しく,これが塩化物区における収量低下の主な問接的原因と考えられた. 茎葉中に吸収されたカチオンおよびアニオン全量を計算すると,いずれも塩類濃度の増大に伴って増加したが,その比率は減少していくので,多くの作物中水稲の耐塩性は中程度と判断した. 2.水耕栽培した水稲を生育時期別に2回にわけて,硫酸塩と塩化物で60meq/lの濃度とし,15℃と25℃の人工気象室内に1週間ずつ入れ,その生育と茎葉中への養分吸収の変動を検討した. 温度および濃度変化を与えたのがわずか1週間ずつであったため,生育に差は現われなかったが,養分吸収には変動が認められた. すなわち,2回の実験とも,15℃に入れた塩類処理区の全窒素含量が低く,とくにCl-60区でその傾向が強く現われた. カリウムは両温度区ともに塩類処理区で吸収阻害が認められたが,15℃区の方がその傾向が著しかった. 3.培養液を更新する試験区と,常時湛水においた場合について比較検討した. 一般に更新した場合,対照区では塩化物区の方が茎葉乾物重が多かったが,生育後期になると,Cl-60区の生育が劣ることが認められた. 湛水状態の場合も同様の傾向であったが,更新区よりもかなり生育が劣ることが認められた. 10月25日に収穫した穂重でも全く同じ傾向が認められた. 茎葉中に吸収されたナトリウムは,対照区では全生育期間を通じて,更新,湛水の別,硫酸塩と塩化物による吸収量の差は認められなかったが,60meq/l4区ではその差は著しく,一般に塩化物区で吸収量が多く,しかも湛水区で多いことが認められた. 全窒索含量は更新した場合は大差が認められなかったが,湛水区では生育後期に含量が低くなり,60meq/l区で含量が低く,とくにCl-60区でその傾向が強く現われた. カリウムは対照区と比べて60meq/l区で吸収阻害が現われ,湛水状態での含量低下が著しく,Cl-60区でこの傾向が顕著であった。
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