高等学校における心身の健康実態と支援体制の構築に関する研究
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概要
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近年の社会変化により、心身の健康問題は、多様化・複雑化し、教育病理現象ともいわれ、教育の危機的状況を招き、現在の臨床教育学研究に新しい視点が提示された。高等学校における心身の健康問題を持つ生徒は、どこの学校でも在籍し、養護教諭は、いじめや不登校の初期、心身の健康問題に対等のSOSのサインを判断し、適切な健康相談活動等の対応を行っている。藤田和也は、このような養護教諭の教育実践は臨床教育学の範疇にあるとしていた。今回、高等学校における心身の健康実態と支援体制の構築に向けて、かきの調査並びに筆者の教育実践事例等を基に検討したので報告する。1 学校で把握している健康の実態は、多くの学校に社会情勢を反映した心身の健康問題を持つ生徒が在籍し、養護教諭は健康実態を把握し支援している。調査内容は、平成8年度に日本学校保健会が実施した全国調査と同一の内容と比較し、本調査は全国調査と同様の結果であった。2 養護教諭78人の事例の内訳は、成功事例61例、失敗事例53例で、成功群は、養護教諭がよく関わり、医療との連携がよく、校内で情報の共有がよくできていた。養護教諭が中心となり、校内の連携、支援体制により、生徒は多くの同世代の仲間の支援や人間関係によって発達課題を乗り越え、校内における教職員の組織的な支援と教育的配慮により進級卒業を成し遂げることができた。失敗群は、家族の無理解から医療を受ける者が少なく、学校に背を向ける事例が多かった。また、病気の程度と体力・気力の限界により学校生活が中断されるものが目立った。3 教諭と養護教諭の意識調査からは、相互によく連携し、それぞれの専門性を尊重しながら役割を分担して、校内で組織的な支援を行っていた。教諭・養護教諭の支援体制の考えは、学校全体の組織体制が効果的であり、養護教諭は、医療等の専門機関と連携し、該当生徒の情報を基に、校内で教職員と連携し、専門性を活かしながら必要な支援体制をつくりあげていく役割があると考えていた。成績や履修の問題は、多くの学校で組織的な支援体制による個別指導が行われ、教科の学習時間や内容を担保した上で、成績会議で協議し教務内規を弾力的に運用する等の教育的配慮が行われていた。4 健康問題を持つ生徒に必要な支援体制の構築は、養護教諭がコーディネータ役を果し、校内で、特別委員会制度を設けて学校全体で取り組む方法が有効であった。特別委員会で支援方針を検討し、職員会議で共通理解を得、教職員全体で取り組み定期的に支援方針の修正を行う。生徒は、学校生活を送ることで、同世代の生徒の刺激を受けながら、発達・教育的効果が得られ、学業が続けられ教育ニーズを達成することができた。また、外部の専門機関の連携は、治療と教育が有機的につながる校内支援体制の構築につながっていた。
- 2004-02-15
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