文化の革新としての次世代再生産 (<テーマ>変わりゆく「家族」と次代再生産)
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概要
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多様な要因が絡み合う次世代再生産の問題を家族の視点だけから解明することにはもちろん限界がある。そのことをふまえた上で、出生行動に影響する家族慣行の変化を「排他的親子関係」「嫡出性の基礎としての婚姻家族の衰退」「職業生活と家族生活」「世代間の連帯」について考察していくと、以下の事実が明らかになる。現在の出生行動や子育て環境は、婚姻家族規範の強制と動揺の中で、新たな指標も見いだせずに方向性を失った状態にあるということである。「排他的親子関係」は、嫡出家族における父母と子どもという閉じられた関係を子どもの育成の基本とすることを意味している。この排他的親子関係は、子育てのネットワークを社会的に開いていく契機を持たないところに特徴があるが、再編家族や特別養子をとおして、排他性を見直すべき現実が拡大していることがみえてくる。日本社会の強固な嫡出性の原理の存在についてみると、婚姻内で子どもを産むという規範を強いることによって、性行動と生殖行動がライフサイクルの中でいっそう分断され、晩婚化と相まって子どもを産みにくくしているとみることができる。また女性労働の社会的重要性にもかかわらず、職業生活と子育てとを両立させるための社会的な措置が、働くものの具体的なニーズに応じて作られているかも問題であり、フランスとの比較をとおしてみれば、それが不十分であることも明らかである。さらに、世代間の連帯を祖父母と孫との関係でみると、父系性が衰退し、夫方、妻方の双方が孫との関係を親密に形成することが多くなっている。その親密さは、子どものしつけには介入しないという距離を置いた連帯関係となっている。これらの家族慣行の変化をとおして読み取れることは、象徴としての婚姻家族の衰退であり、新しい象徴体系としての家族像が求められているということである。次世代再生産の問題もまた、この文化の革新の中で解明されていかなければならない。
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