有機農業の普及に関する考察
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概要
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筆者は全国各地で有機農業を実行している人たち(110~150人)に対して、3次にわたりアンケート調査をおこなった。ここでは、諸回答のうち文章による回答を整理、分析して報告した。回答文の分析は集計できないが、新規な情報や本音を語る意見があるために、教えられることが多く、かつ問題発見の手がかりが得られるので、非常に有功な研究方法であることが分かった。有機農業は、自然の生態系を維持するために、化学的な物質を農地に施用しないことによって成立するとされている。アンケート回答によれば、このような自然の生態系の水準に達している農家もあるが、一方で努力目標に留まっている農家も多い。わが国の高温多湿の気候条件が病虫害の多発を呼びやすいために、それに耐え切れずに農薬を使用するわけである。有機農産物の流通は一つの曲がり角を迎えている。1970年代は有機農産物の供給量が少なく、消費者が生産者を訪ねて農作業を手伝ったり、直接購1入・共同購入の方式をとっていた。1990年代に入ると、消費者の世代交代や就業によって、この方式は減退傾向が進み、代わって各種の流通機関が有機濃産物の取り扱いに参与するようになった。生産者と消費者の間の理想を求める連帯感が弱くなり、消費者にとって有機農産物は必ずしも産地直売でなくても、安全な食品の一部であればよくなった。一方で、宅配便による有機農産物の供給は新しい顧客を獲得しつつある。従来、公的機関は有機農業に対して冷淡であったので、有機農業者は公的機関とのかかわりなしで自らの道を切り開いてきた。2000年以後、有機農業の認証制度が発足し、また、「環境保全型農業」も行政によって勧奨されている。しかし、アンケート回答からみれば、これらは必ずしも有機農業の育成を主目的とはしていない、との見解が強い。有機農産物を求める消費者の多いことが有機農業の存立条件である。関東地方に有機農家が多いのは、関東平野が日本一の畑作地帯であることと、もう一つは有機農産物を求める消費者が首都圏に多いことと関係する。
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