ガンディ-の禁欲-1-彼にとってのブラフマチャリアの必要性
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概要
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「マハトマ」の尊称で名高いMohandas Karamchand Gandhi(1869-1948)をして世界にその名を知らしめているのは,徹底した非暴力による政治運動,<サティアグラハ>である。彼は,<サティア>すなわち「真理」と呼ぶものを,自分の生きる時空において実現せしめんと,生涯にわたって真摯な努力を重ねた。そうした努力のうち,彼にとって最も重要だったものの一つが,虐げられた者の具体的救済であり,また別のものが,<アヒンサー>すなわち「非暴力」であった。そこから彼の<サティアグラハ>は生まれている。これに比すれば,ガンディーがきわめて厳格な禁欲主義者であったことは,広く知られているとは言えない。彼は,衣食住すべての生活領域にわたって,最も貧しく質素な生活をこそ最高のものとみなした。仕草や話しぶりも,非常に抑制された穏やかなものだったと伝えられている。彼の目指していたものは,あらゆる欲望と情動を意思のコントロール下においてしまうことであった。そして,こうした禁欲の諸実践もまた,彼にとっては<サティア>実現のために欠かすことのできない課題として認識されていたのである。なかでも***は,制御されるべき最も深刻な課題とみなされた。幼児婚の風習によって13才で結婚していたガンディーは,37才のとき,妻カストゥルバーイとの性交渉の断念に踏みきる。これが<ブラフマチャリア>の誓いである。その後の生涯,ガンディーは,この誓いを全うするため試行錯誤を重ね,比較的早い段階において,***の制御のためには全面的な禁欲の実践が必要だとの結論を得ている。すなわち,この誓いを境に,味覚と食欲の制御に始まって,彼のセルフ・コントロールの努力は次第に生活の隅々にまで及んでいくのである。こうした意味で,彼の<ブラフマチャリア>は,単に"性的禁欲"という伝統的な意味でばかりとらえられるべきではない。彼にとっての***の問題とは,彼の禁欲的ライフ・スタイル全体にとっての出発点・焦点としてのみ把握可能なものである。しかし,ガンディーの禁欲の全体像を論ずるのはこの小稿では足りない。本稿では,性的禁欲としての<ブラフマチャリア>に限定して議論を進めたいと思う。そして特に,彼がそこにかけた情熱,あるいは動機・目的を論じてみたいと思う。M. K. Gandhi, well-known as the "Mahatma" who led the non-violent movement against British imperial rule, was a strict ascetic as well as a political leader. He attempted to pursue a life of simplicity and poverty and struggled to maintain perfect control by the will over his passion and desire. He took lust as his most serious challenge and, at the age of 37, ceased intercourse with his wife and took the vow of Brahmacharya. But why did Gandhi need to take such a vow? Where was its necessity? Through a close reading of his autobiography, we can ascertain the following answers. First, he possessed a complex of lust and despotism toward his wife. Second, according to his own words, he had no other choice than to give up his household duties before making the decision to devote himself thoroughly to either public service or human nature. Last and most important, he held an unshakable belief in conservative sexual morality. This supported all of his feelings and efforts in relation to Brahmacharya and sustained and energized his asceticism for decades.
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