連携・交流に基づく流域管理体制の構築と課題 - 北上川河口の「濁流」問題提起から「コモンズ」としての流域へ -
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本誌第81号所収論文(塚本,2007=前稿)で論じたように,東北一の河川・北上川河口域には広大なヨシ原を中心とする自然生態系・景観が残され,典型例な“里川”として,採取されるヨシ・シジミ等水産資源を,住民が戦前から<生活財><経済的財>さらに<社会的財>として利用・管理しながら維持してきた。近年は域外からも<環境財>として注目を集め,行政や住民団体による新たな利用・管理体制作りも開始されるなど,河口域生態系・景観保全に向けた機運が高まっている。しかし,河口域自然資源を取り巻く問題は決して河口域社会内部だけの閉じた問題ではない。河口域は最下流に位置しており,上・中流域社会の開発・発展のあり方や森林生態系維持・管理状況(上・中流域での手入れが不十分な山林面積増大),水資源開発(特に河口域での河口堰建設・稼動)等による多大なインパクトを受けていることに,十分注意する必要がある。実際,河口域や周辺海域(流出先の追波湾)では,増水時に大量の流木やごみが流下する「濁流」被害が地域問題化したり,上流域からの生活雑排水流入に伴う水質悪化,河口堰稼動後の塩分濃度上昇によるヨシ・シジミ等への影響が指摘されるなど,河口周辺生態系の維持・管理を流域全体の問題として考えていくことが必要になっている。こうした中で2000年頃以降,「流域」を単位とした生態系管理=<流域管理>の視点も交えた動きが,河口域を始め流域各地で開始され一定の成果を収めており,河口周辺自然資源をめぐっては,前稿で論じた伝統的地域共同管理に基づく「コモンズ」的利用・管理システムと<流域管理>の視点を交えた「共同管理」体制再構築を目指した動向が,関係を持ちつつ並存している。
著者
関連論文
- 連携・交流に基づく流域管理体制の構築と課題 - 北上川河口の「濁流」問題提起から「コモンズ」としての流域へ -
- 「コモンズ」としてのヨシ原生態系活用・保全の論理・展開・課題: 北上川河口域をフィールドとして
- 寒冷地における「エコ住宅」普及の可能性と課題―アンケート結果および普及促進策に見る異質性の活用と総合性―
- 日本の女性・ジェンダー関連NGOにおける資源の小規模性とネットワーキング戦略 : 影響力強化に向けた展開と課題
- アジア途上国農村地域におけるジェンダー平等と日本のNGOによる国際協力
- 環境運動の資源動員構造と参加者のアイデンティティ変容に関する一考察
- 環境運動の資源動員構造と参加者のアイデンティティ変容に関する一考察