極小主義以前の変形生成文法理論における制約の研究史
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概要
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チョムスキーの極小主義プログラムが世に問われて以来、変形生成文法の研究の傾向にも大きな変動があった。極小主義以前盛んに研究されていた島の制約に代表されるような統語的制約については、極小理論では目覚ましい展開がこれまでなかったと言っていいであろう。そこで、極小主義の枠組みでそれらの制約を考える際の参考に供するため、本研究ノートでは極小主義以前の理論で統語的制約がどのように研究され発展してきたのかを概観してみた。要約すると以下のとおりである。Chomsky(1964)は変形操作を制約する原理の存在を主張し、それは後にA-over-A原理と呼ばれるようになった。A-over-A原理に触発されRoss(1967)はその後の研究に重大な影響を与える制約群(ロスの制約)を提唱した。その成果を受けChomsky(1973)は下接の条件を提案し、ロスの制約のいくつかが統合可能であることを示した。その後Chomsky(1981)によって空範疇原理(ECP)が提案され、移動の結果生じる痕跡に関わる重要な制約として認識されるに至った。Kayne(1981)はECPを修正し下接の条件の大部分をECPに包含することを提案したが、Huang(1982)らの批判を受け、下接の条件は存続することになった。Huang(1982)は抽出領域条件(CED)を提案したが、CEDと下接の条件の間に見られる重複性の問題が課題として残った。その重複性を克服するためにChomsky(1986)は、下接の条件における境界節点の定義を環境に依存するものに変更し、障壁という概念が誕生した。これにより下接の条件がCEDを包含することになった。その結果、極小主義移行直前のチョムスキー派の変形生成文法理論においては、下接の条件やECPが移動にかかる制約として残され、それらが束縛原理やθ-基準等と「共謀」して移動操作を拘束するという状況を呈していた。
- 琉球大学法文学部国際言語文化学科欧米系の論文
琉球大学法文学部国際言語文化学科欧米系 | 論文
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