塞栓術で治療し得たTVT手術に合併した動脈損傷の1例

概要

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75歳女。腹圧性尿失禁の診断でtension-free vaginal tape(TVT)手術を施行した。術中、TVT needleでまず尿道右側を穿刺し、膀胱穿刺のないことを確認後にneedleを引き抜き、次いで術者が交代して尿道左側を穿刺したが、この際に恥骨上縁切開創から動脈性出血を認めた。しかし、needle引き抜き後、止血されたと判断し、手術を続行した。帰室3時間後より下腹部痛、嘔気が出現し、下腹部膨隆を認め、血圧低下、HbおよびHt減少も認めた。手術終了5時間後に造影CTを行い、骨盤腔内の血腫、恥骨後面の動脈性出血が明らかとなった。動脈造影を開始し、恥骨後面左側を走行する動脈の出血点をgelatin spongeとコイルで選択的に塞栓した。以後全身状態は安定し、また、腹圧性尿失禁は消失した。術後5日目の腹部CTで血腫は縮小しており、術後8日目に退院した。術後2ヵ月時点で更に血腫は縮小しており、下腹部不快の訴えは継続したが、腹圧性尿失禁や排尿障害の訴えはなかった。
泌尿器科紀要刊行会の論文