ポリアクリルアミドゲル電気泳動によるネズミマラリア原虫特異酵素の検出
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概要
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マラリア原虫を感染させたマウスでは正常マウスに較べ血漿の総蛋白質量,アルブミン量などが低下する傾向が見られたが,一方乳酸脱水素酵素やアミノ転移酵素などの活性は著しく上昇した.その原因が感染に伴なう宿主血液系における変化によるものであるのか,あるいは寄主自身の産生する酵素によるものであるのかはこれらの測定値だけからは区別することができない.そこでマラリアの生化学とくに寄主宿主関係についての基礎的知見を得るためにポリアクリルアミドゲルによる電気泳動を行ない,正常マウス,マラリア感染マウスの血漿,赤血球,分離マラリア原虫などの可溶性蛋白質や酵素の泳動像について比較検討を試みた.その結果,乳酸脱水素酵素,リソゴ酸脱水素酵素,グルタミン酸脱水素酵素,カタラーゼ,グルタミン酸オキザロ酢酸アミノ転移酵素,エステラーゼなどにおいてマラリア原虫に特有と考えられる活性泳動帯が認められた.また感染マウス血漿で著しい活性上昇が見られた乳酸脱水素酵素やグルタミン酸オキザロ酢酸アミノ転移酵素では,赤血球の崩壊に伴なう宿主側の酵素とマラリア原虫自身に由来する酵素の双方がその原因となっていることが証明された.マラリア原虫の解糖系に隣接する代謝系についての報告,とくにブドウ糖6燐酸脱水素酵素の有無については,従来多くの混乱が見られたが,今回用いられた系統のマラリア原虫抽出液中には宿主赤血球の酵素と一致する活性帯しか検出されなかった.このように同一ゲル上での電気泳動による比較は寄主宿主間の酵素系の異同を識別する上で極めて有力な手段であることが示された.In plasma samples of mice infected with a rodent malaria parasite, NK 65 strain of Plasmodium berghei, decreases in total proteins and albumin were noticed whereas increases in enzyme activities were significant in LDH, GOT, and GPT. By means of horizontal electrophoresis on 5% polyacrylamide gel plates, plasma, hemolysates of normal or malaria-infected mice, and cell-free extracts of the parasite were compared for various enzyme activity bands. Of several enzymes examined, the parasite extracts contain the following enzymes of which electrophoretic mobilities differ from those of the host blood system: LDH, MDH, GDH, catalase, GOT, and esterases. With the exception of the esterases, which migrate rather rapidly towards the anode, all the parasite specific enzyme bands have relatively slow mobilities around an area between the start line and plasma ChE position. No detectable band of parasite-specific G6PDH has been found except for the RBC-specific bands, suggesting that initiation of the pentose phosphate cycle in the parasite substantially depends upon the G6PDH of the host RBC.
- 長崎大学熱帯医学研究所の論文
- 1974-06-30
長崎大学熱帯医学研究所 | 論文
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