光照射および温度が自己接着性レジンセメントの硬化挙動に及ぼす影響
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概要
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目的:レジンセメントに機能性モノマーを含有させることで,歯質とともに修復物の前処理を不要とした自己接着性レジンセメント(以後,自己接着セメント)の臨床使用頻度が増加している.これらの自己接着セメントの硬化挙動を知ることは,臨床的にも重要であると考えられるものの,その初期における硬化挙動については不明な点が多い.そこで,光照射および温度が自己接着セメントの硬化挙動に及ぼす影響について,試片を透過する超音波の縦波音速の変化を測定することによって検討した.材料と方法:供試した自己接着セメントは,クリアフィルSAセメントオートミックス(SA),リライエックスユニセム2オートミックス(UC)およびビューティセムSA(BC)の3製品である.超音波測定装置としてパルサーレシーバー,縦波用トランスデューサーおよびオシロスコープから構成されるシステムを用い,伝播時間と試片の厚さとの関係から縦波音速を求めた.硬化挙動の測定は,光線照射を行わない,あるいは600mW/cm^2の条件で光線照射を行う2条件で,その各条件に試片温度を23℃および37℃とし,合計4条件で行った.測定は,照射を行わない条件では,赤色ランプ照明下で30秒ごとに15分間行った.照射を行う条件では,試片の両側面から30秒間照射を行い,照射開始から5秒ごと15分間測定した.また,練和から1,6,12時間および24時間経過した試片についても同様に測定を行った.成績:供試したいずれの自己接着セメントにおいても照射を行わなかった条件では,これを行った条件に比較して音速の上昇傾向が遅延し,その傾向は特にSAおよびUCで顕著であった.また,試片温度の違いでは,いずれの製品においてもこれが高い条件で音速の上昇程度が大きくなる傾向を示し,特にこの傾向はBCにおいて顕著であった.一方,UCにおいては照射を行った条件では試片温度の影響は認められなかった.結論:自己接着セメントは照射が不足する条件においては,製品によっては初期の重合硬化反応が遅延するとともに,試片温度の影響を受けることが明らかとなった.したがって,これらの自己接着セメントの臨床使用にあたっては,照射条件および試片温度における硬化特性を十分に考慮して製品を選択することが重要であることが示された.
- 2013-10-31