人口変動を内生化した重複世代モデル
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概要
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この研究の目的は,重複世代モデルを利用した人口変動と資本蓄積の同時決定メカニズムを考察するものである。その主たる仮説は,ライベンシュタインによって提示された子ども需要に関するものであり,このうち子どもの消費効用と保険効用に焦点をあてて分析を行っている。モデルには,経済の生産構造も組み込み,人口成長と資本蓄積の動学的経路と安定状態における均衡解の探索ができるように構成されている。最初に,子どもに対する需要はその労働所得に対しては正,また直接及び機会コストに関しては負の関係を持つという基本的な関係を示し,さらに動学的な資本蓄積経路から安定状態にこの動学経路が収束するための条件を求めた。次いで,年金制度を導入し,引退後の保険としての子ども需要を重視した分析を行った結果,年金給付水準が高まるほど人口増加に正の影響をもたらすこと,子どものコストの上昇は民間貯蓄率を上昇させるが,一方で年金制度の充実は民間貯蓄率を低下させることなどを明らかにした。最後に,出生促進政策の一環としての家族給付をとりあげ,価格補助方式による給付の方が所得補助方式による給付よりも子どもに対する需要へのインパクトが大きいことを示した。
- 日本人口学会の論文
- 1999-12-01