マイクロ・シミュレーションによる日本出生力の生物人口学的分析
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概要
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本論文は厚生省人口問題研究所が1980年から83年にかけて実施した特別研究の結果の一部である。この研究は日本女子出生力の水準と動向に影響を与える生物人口学的要因(Davis-Blakeの中間変数にほぼ等しい)の分析をマイクロ・シミュレーションによって行なったものである。シミュレーションのアウトプットとして,年齢別出生率,女子のパリティ構造,妊娠率,自然・人工流産数等が得られる。本モデルは約20個の変数を扱うが,その中の12は随時変化させることができ,それぞれの変化の影響を計量できる。もう一つの重要な特徴はダイナミックなモードであって,1コウホート1,000人の女子から成る15のコウホートを同時に扱い,45年間の期間別出生率をシミュレートすることができる。結果を要約すれば次のとおりである。1. このシミュレーションは1945年から1982年までの合計特殊出生率をかなり良く再現することができた。2. シミュレーションによる結果と現実の動向との適合が良好であると,次にその要因を変化させて出生率に及ぼす効果を考察することができる。ここで種々のシミュレーションを行なった結果,初婚年齢と予定子供数の変化がコウホート・期間別双方の出生率に大きく関係していることが明らかとなった。3. 初婚年齢の上昇がとくに期間出生率に注目すべき面白い効果を与えることが判明した。すなわち,コウホートの初婚年齢を2歳程上昇させることによって,30年間期間出生率がコウホート出生率の水準を下回る。4. 15のコウホートを用いた大型シミュレーションによれば,わが国の合計特殊出生率は1980年代半ばから上昇に転じ,1990年前後に1.9の水準に回帰する傾向を示している。
- 日本人口学会の論文
- 1984-05-21
著者
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