声調をめぐる『若菜集』の戦術 : 『万葉集』との関連を中心に
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概要
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藤村『若菜集』の七五の声調は、音数律と一蹴され再評価されていない。しかし当時、散文的なことが新体詩の欠点と言われるなかで、その詩句は、変化や締まりがあり詩的であると高く評価されていた。それは藤村が、単調に陥ることのない美しい声調を目指して、深い意味や纏まりを持つ詩句の表現を模索した結果である。藤村は特に『万葉集』から、助詞・助動詞の省略、造語法、朝夕の対偶を持つ対句表現などを学んだ。そのほか感嘆表現、比喩表現など、表現上の様々な尽力と挑戦のもとに、その声調は成立している。特に『万葉集』を参照したのは、それが長歌を特色とする唯一の歌集であり、また国民の純粋な<感情>の表現という当時の藤村の文学像に、『万葉集』の像が合致していたためである。
- 日本近代文学会の論文
- 2013-11-15
日本近代文学会 | 論文
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