中国における外国技術導入の新動向 : M&Aによる技術獲得への企業戦略の転換を中心に
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概要
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本稿は、2000年以降の中国における外国技術導入について、その対外M&Aによる技術獲得の新たな動向を明らかにしようとするものである。2000年以降の技術導入の全体状況は、件数・金額とも増加している。主な導入先としては、日本、アメリカ、EUおよび韓国などの先進国である。内資企業に比べ、外資系企業は既に技術導入の主役になっており、中国市場で競争するために積極的に技術移転を行っていると言える。また、生産技術の導入は基本的に製造業に集中している。製造業におけるハイテク産業では、電子・通信設備製造業の導入経費支出が全体の70%を占めている。これは同業種分野における競争の激化が関係している。技術導入の成果は、ハイテク製品を含めた工業製品の輸出拡大や世界市場におけるシェア拡大から伺うことができる。以上のように、2000年以降も続く国内市場の拡大と高度化、そしてグローバル競争の激化に対応するために、企業は技術導入を加速させている。しかし、内資企業と外資系企業との間には大きな技術格差が依然として存在し、国内市場においても内資企業は技術競争力という側面で不利な立場にある。内資企業は、激化する国内外の市場競争に対応するため、従来の技術導入では得られない先進技術を獲得しなければならなくなっており、技術獲得戦略の転換が迫られている。そのため、WTO加盟後政府の支援を得て自ら対外直接投資を行い、外国企業を買収することを通して技術を獲得する内資企業が増えてきた。中国政府は2000年に内資企業の海外進出を奨励する政策を打ち出した。さらに「第11次5カ年計画」(2006〜2010年)において、対外投資を積極化することを掲げ、対外M&Aの審査基準などを緩和した。このような政府の政策に後押しされ、中国の内資企業による対外直接投資と対外M&A は加速している。技術獲得を目的とする対外M&A は、製造業に多く見られる。とりわけ、工作機械や自動車メーカーなどの技術集約型産業である機械製造業の対外M&Aは目立っている。これらの外国企業の買収においては、技術取引契約や知的負産権契約を結んでおり、買収を通じて自動車などの機械製造に関わる技術を吸収している。また2000年以降、内資企業による日本企業のM&Aも増加している。このような買収は、いずれも日本企業が持つ技術を吸収し、中国での生産に活かす狙いがある。このように、中国の対外M&Aは未だ初期段階にあるが、技術獲得の手段として活用されるケースが増えている。しかし、国際経営の経験に乏しい中国企業にとっては、現在、買収後のマネジメントが最も重要な課題であると言える。
- 成美大学の論文
- 2011-03-31