経済地理学の「本質」とは何か?(<特集>経済地理学の本質を考える)
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概要
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本稿は,経済地理学会第60回大会実行委員会から与えられた報告課題に,筆者なりに答えるものである.そのために,アングロサクソン世界での経済地理学の半世紀を回顧したScott (2000),ドイツの経済地理学を回顧して関係論的経済地理学を展望したBathelt and Gluckler (2003),そして日本の経済地理学の半世紀を回顧して21世紀のそれを展望した矢田(2003)を主たる検討材料とし,これらと筆者が直接教えを受けた幾人かの経済地理学者の考えを踏まえて,経済地理学の「本質」に関する筆者なりの考え方を示す.欧米の経済地理学とは異なり,日本の経済地理学は多様性に富んでおり,地誌から理論計量,そして関係論的経済地理学へと転回したわけではない.むしろ,少なくとも経済地理学会創立当初から現在に至るまでその3つの各々に親和性を持つ潮流は存在している.今や欧米では関係論的経済地理学が主流をなしているが,日本では地域の重層性という視点を持つ地域構造論が優勢をなした.関係論的経済地理学と地域構造論には親和性があるが,各々の独自性もあり,相補うことによってより豊かな経済地理学を構築できるであろう.その際には実体としての地域の存在を明らかにし,それを形成する経済主体の役割を描き,その経済主体が歴史的に育んできた文化を明示的に取り入れることが有効である.
- 経済地理学会の論文
- 2013-12-30