肥満糖尿病モデルdb/dbマウスにおけるDPP-4阻害薬とチアゾリジン誘導体の併用による相加的膵β細胞保護作用とその分子機構
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概要
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2型糖尿病の病態とりわけ膵β細胞機能低下は経年的に進行するため,いかに細胞機能保護を計るかは長期血糖管理の上で重要な課題である.経口糖尿病治療薬の中でもDPP-4阻害薬とpioglitazone(PIO)は膵β細胞保護効果作用を有する.本研究では両薬の併用による相加的な膵β細胞保護効果作用とその分子機構について検討した.肥満糖尿病モデルdb/dbマウス雄性6週齢をALO,PIO,併用,コントロールの4群に分け4週間の介入を行った.さらに,介入後に膵島の形態学的,機能的解析に加え,laser capture microdissection法およびreal-time RT-PCRを用いた膵島コア領域遺伝子発現解析を行った.その結果,血糖値は全介入群で有意に低下し,併用群でより顕著であった.インスリン抵抗性はPIO群と併用群で改善した.膵β細胞量はコントロール群に比しALO群またはPIO群で増加傾向,併用群で有意な増加を認め,膵島インスリン含量とグルコース刺激性インスリン分泌の改善を伴った.膵β細胞増殖能はALO群,PIO群で増加傾向,併用群で有意な増加を示し,アポトーシスはALO群,PIO群で減少傾向,併用群で有意な減少をみた.遺伝子解析では,Insulin遺伝子発現量はALO群と併用群で増加し,PIO群ではインスリン抵抗性改善を反映し減少傾向を示した.GLUT2遺伝子発現は全実薬群で増加傾向を認め,併用群でその傾向は強かった.PDX-1,MafA,Cyclin DおよびBcl-2遺伝子はALO群,PIO群で増加傾向を示し,併用群で顕著であった.膵β細胞量および機能維持に必須であるIRS-2遺伝子の発現量はALO群で増加傾向を示し,併用群で顕著に増幅された.また,GLP-1R遺伝子発現はALO群,PIO群で増加傾向を示し,併用群で顕著であった.肥満2型糖尿病モデルdb/dbマウスに対するALOとPIOの併用投与は,少なくとも一部はGLP-1シグナルを介したIRS-2発現調節により相加的な膵β細胞保護効果を発揮する可能性が示された.
- 川崎医科大学の論文
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