日本民謡の大規模音楽コーパスを用いた旋律の構造抽出
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文では,(1)日本民謡の音楽的特徴--旋律に内在する法則--を科学的に捉え,(2)抽出した特徴に基づき日本民謡の地域性を客観的に判断する指標を示す。はじめに『日本民謡大観』(1944-1993)に収録されている種目のうち全国的に網羅的に存在する日本民謡1,794曲と,Web上に公開されている大規模音楽データベースに収録されている中国民謡1,984曲から,それぞれ音楽コーパスを構築する。日本民謡の比較対象として,中国民謡を用いる理由は,中国音楽が日本音楽の形成に多大な影響を与えてきたにもかかわらず,音楽文化や旋律のもつ雰囲気などの点で違いが見受けられるためである。分析の手順としては,各コーパスに対してVLMCモデルを用い,旋律中に繰り返し出現する音程推移パターンを抽出する。そして地域・種目などの背景要因に応じて日本民謡の楽曲データをグループに分割し,計量的な手法を用いてその特徴を比較検討する。その結果,日本音楽の特徴は,民俗学や歴史学において提唱されている日本列島の東西二分論(社会組織論)のほか,方言研究やアクセントの分布図とも一致することがわかった。