肝細胞癌との鑑別の困難なmultiacinar regenerative noduleを呈したFontan術後の1剖検例

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近年、Fontan術後の遠隔期の合併症としての肝合併症の報告が増加している.今回、生前に肝細胞癌との鑑別が困難な肝多発結節性病変を呈したFontan術後の1剖検例を経験したので報告する.症例は20歳代男性.出生直後より心雑音があり、1歳時に多脾症、完全型心内膜床欠損、両大血管右室起始、肺動脈狭窄、単一心房、狭小左室、総肺静脈還流異常の診断となった.6歳時にFontan手術を施行した.入院の3年前より施行されていた腹部超音波検査において肝内多発結節が指摘され、その後尾状葉の結節は経時的に増大を示したため肝細胞癌も疑われていた.以後、チアノーゼの進行とともに全身状態が悪化し、浮腫、腹部膨満感の増悪のため入院となった.入院後は抗心不全治療にも徐々に治療抵抗性となり、第21病日に永眠された.剖検時、肝には大小様々な結節が多数認められ、尾状葉は3.5×5.0cm 大の腫瘤性病変で占められていた.組織学的に、尾状葉の結節内は異型に乏しい肝細胞からなり門脈域が同定された.結節外の肝には高度なうっ血性肝硬変を認めた.潜在的な肝線維化の進行は肝硬変に進展し、種々の肝結節性病変や肝細胞癌の母地になりうる.肝細胞癌と鑑別の困難な結節性病変は多種みられるが、臨床的には腹部超音波検査やCT検査、MRI検査が鑑別に有用である.病理学的には肝細胞の異型性、結節性病変の大きさ、また結節内に門脈域が存在するか否かが鑑別にあたって重要な点といえる.これらの点から,本症例における結節性病変はIWP分類におけるmultiacinar regenerative noduleに合致するものと考えられた.
2014-03-31

肝細胞癌との鑑別の困難なmultiacinar regenerative noduleを呈したFontan術後の1剖検例

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