『泉の書』(1526年)に描かれたルーアン
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿では1526 年にジャック・ル・リユールがルーアン市に献じた、彼自身による『泉の書』を紹介する。この書物は手書きのテクストによる説明書と当時ルーアン市の管轄下にあった3 つの水道の地図、および都市全体の景観図で構成される。その叙述において、一方では水源から市内の水汲み場までの水道の現状、その水道の個別的な利用を認められた修道院または個人と都市との権利関係、水供給の改善について個別具体的で詳細な叙述をしているが、もう一方で価値判断基準としては「公共の事柄」という幅広い概念を適用している。ル・リユールは当時の都市環境を描くのに、現代の私たちとは異なる視点をもっており、その視点の相違が注目される。