林内殖民制度に関する研究(会員研究発表講演)
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概要
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北海道における林内殖民制度は,明治末期より大正中期にかけて,本道における大林野所有のなかに広く区画設定された制度である。この林内殖民は,制度的には昭和39年の東大・北大の両大学演習林における解放によって最終的に解体された。この林内殖民の成立,展開,解体の過程を考察するとき,それは北海道における農業及び林業の資本主義的発展と大きくかかわりつつ展開していったといえる。本稿は,この林内殖民制度の展開過程を北海道における林業の資本主義的発展と資本主義的林野所有の成立との関連において考察しようとする研究のための一試論である。すなわち,それは林業の資本主義的発展が,新開地における大林野所有のなかに措定された農民層の分化,分解をいかに促進し,また阻止しつつ,資本主義的林野所有を成立せしめたかに関する研究であり,いいかえれば,林業の資本主義地代の成立過程を資本による小生産者の賃労働への転化,およびそれを媒介として土地所有の資本主義的土地所有への転化の過程としてとらえようとするものである。北海道における林内殖民制度については,これまでにいくつかの調査,研究報告がなされているが,本稿はこれらの成果を通じて,林内殖民制度の一般的規定とその北海道における存在の歴史的形態を農業・林業の展開との関連において理論的に考察する。
- 北方森林学会の論文
- 1966-12-25