刑事・少年司法と心理学の可能性(<特集>法と心理学の可能性)
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概要
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学際的な共同研究を実りあるものとするには、法学研究者が心理学の方法論を、心理学研究者が法学方法論を、理解していることが必要不可欠である。心理学研究者は、心理学が「事実の学」であるのに対して、法学は「規範の学」であると捉えがちである。法学にはいわば応用分野である法解釈学があり、事実を踏まえないままでも法解釈が可能であることから、自己の価値観にのみ基づくことに無自覚な法解釈や法運用が横行している。客観性を有する証拠と矛盾する供述録取書を信用して行う裁判官の事実認定が、冤罪・誤判を生み出している。冤罪・誤判でない事案についても、刑務所や少年院における施設内処遇や、保護観察官・保護司による社会内処遇の内容が、その意図通りの効果を挙げているのか否かが問題となる。いわゆる「社会」が、犯罪や非行をどのように捉えどのように対応しようとしているのかも問題となる。法学は、法社会学や刑事学など「事実の学」でしかありえない分野を既に内包している。それ故、刑事手続過程についての、法学研究者による調査研究例もある。しかし、法学研究者と心理学研究者との共同研究が近い将来実現するならば、より広い分野におけるより深い実情解明作業が進展するであろう。なお、法学研究者が心理学研究者を侍女のように扱う研究ではなく、真の共同研究が行われるようになるには、「事実の学」であるための法学研究者による自覚的な努力が必要である。