小学校6年生の語彙理解度と単語親密度に関する考察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿では,小学校6年生の英語語彙に対する親密性(単語親密度:語彙へのなじみの深さ)が語彙理解度にどのような影響を及ぼしているかについて明らかにした。調査対象語彙は『英語ノート』の261語(名詞253語・形容詞8語)である。単語親密度は基本語データベース(学習研究社, 2008)より引用した。その結果(1)調査対象語彙のうち242語(92.7%)にカタカナ表記があり,更にそれらのうち136語(52.1%)に関して単語親密度の評定ができた。単語親密度の平均値は5.8±0.5点であり,総じてこの136語は単語親密度が高い語彙であった。(2)これらに対する四技能の正答率はリスニングでは91.8±10.2%,スピーキングでは58.3±33.0%,リーディングでは30.0±12.7%,そしてライティングでは8.1±9.9%の正答率で,すべての技能の組み合わせの間に統計的な有意差があった(p<0.01)。(3)単語親密度と四技能との相関関係を調べたところ,リスニング能力(r_s=0.22, p<0.01)及びスピーキング能力(r_s= 0.27, p<0.01)との間に弱い正の相関が見出された。以上のことから,児童などの初期英語学習者に対しては語彙への親密性を向上させることが,リスニング能力及びスピーキング能力の習得に寄与することを示唆された。しかしながら,語彙に対する親密性は成人と初期英語学習者とでは異なることが十分に想定される。それゆえ学齢に応じた語彙への親密性の評価,及びその発達変化を追跡していくことが今後必要である。
- 2012-03-20